目次
『H2』最終巻までのあらすじ
天才ピッチャーである主人公の国見比呂(くにみひろ)たち、千川高校野球部は甲子園を順当に勝ち上がり、準決勝に進出します。
同じく天才バッターである橘英雄(たちばなひでお)もまた、名門明和一高校での準決勝進出を果たします。
そして、比呂と英雄、親友でありライバルでもある2人の念願の対決が始まります。
自分の力に絶対的な自信を持つ2人ですが、2人はこの対決に特別な意味づけをしていました。
比呂の幼なじみで初恋相手、そして英雄の彼女である雨宮ひかりがどちらを選ぶのか。
大会中、英雄がひかりに「おれか比呂かを選べ。(比呂との対決に勝つことで)ちゃんともう一度おれを選ばせてやる。」と言い、そのことが比呂にも伝わったのです。
千川高校対明和一高校。
最も注目されていたこの試合は、明和のピッチャー石元の見事なピッチングにより幕を開けます。
対する比呂は1番と3番に四死球を放ち、1アウト1、3塁で英雄との対決を迎えます。
しかし、比呂が英雄対策に練習していた高速スライダーを用いたことで、英雄は三振となります。
そして3回まで互いに無得点のまま試合が進みますが、4回表で打線がつながり、千川が1点をリードします。
そして回ってきた英雄との2度目の対決は、意表を突いたスローボールで3球三振をとります。
その後も比呂はすさまじいピッチングで明和の打者を打ち取りますが、明和の監督は「いつもの国見じゃないな。野球を楽しまずに張りつめている。」と不穏な発言をします。
【最終34巻】念願の対決の結末は?(ネタバレ)
千川と明和の試合は、千川の1点リードで5回裏。
小学生からの比呂のバッテリーであり千川の4番バッターでもある野田の、巧みなリードによって、またもや無失点に終わります。
異常な疲れを見せる比呂に対して、マネージャーの古賀がねぎらいますが、古賀を見て比呂はひかりのことを思い出します。
その頃ひかりは、明和一側の応援席に叔父と2人で応援をしていました。
ひかりの叔父がひかりにたずねます。
「ひかりちゃんは、、、橘英雄のどこにホレたんだい?」
ひかりはそれには答えず、英雄と一緒に過ごした日々を思い出します。
6回は石元の渾身のピッチング、そして千川チームの好守備により、互いに無得点。
しかし7回表、野田がホームランを放ち、千川の2点リードとなります。
【真っ向勝負をさける比呂】
野田のホームランを見た比呂は、英雄との対決はあと2回だと確信します。
3回目の英雄の打席。
英雄がそのスイングでストレートを誘いますが、比呂はそれを分かりつつ、スローカーブでタイミングを外します。
英雄のバットはボールをとらえますが、比呂と柳の好守備によりアウトとなります。
渾身のストレートでの真っ向勝負を望んでいた英雄は、疑念の表情を浮かべます。
ひかりの叔父もまた「悪役に回ってるなァ、今日の比呂くんは。」とこぼし、そのピッチングに疑問を抱きます。
明和の監督は、比呂が疲れによって余力がないために、真っ向勝負ができなかったのではと考えますが、英雄はそれを否定します。
しかし、7回が終わり野田との会話で比呂は「あまりおれを信用するなよ。」と言います。
また、千川の柳と佐川に「いい当たりが行くかもしれねえけど、頼むぞ。」と、少し弱気ともとれる発言をします。
その後、明和打線にヒットを許すものの、ダブルプレーによって8回も無失点に終わります。
【ついに決着 9回裏最後の打席】
9回表、千川最後の攻撃。
2番の柳が会心の当たりを見せますが、スタンドにはわずかに届かずアウトとなります。
続いて3番の比呂は、残った体力をピッチングに回そうとするも、反射的にストレートを打ちますが、英雄もまたそれを反射的にとってしまい、2アウトに。
ひかりの叔父が英雄の敬遠を心配しますが、ひかりは「それはない」と言い切ります。
比呂は自分らしくないピッチングで英雄との3打席を我慢してきたと。
「勝負は1打席、最初で最後の真っ向勝負。残った力を振り絞って今までで一番速い球を投げてくる。」と言った後、「と、ヒデちゃんは信じてるわ。」と付け足します。
4番の野田もアウトとなり、9回裏、明和最後の攻撃が始まります。
マウンドに向かう比呂に「頑張って!」と言った古賀に対して、比呂は「なれよな、スチュワーデス。」と言い、勝負への気持ちを高めます。
明和のクリーンアップによる波乱が期待される中、比呂は明和の2番を三振で抑えます。
野田は比呂の球威が落ちていることを心配しますが、続く3番では球威を上げ、またもや三振を取ります。
そして、4番、英雄との最後の対決です。
初球、ギアを入れ替えたことで比呂のボールは上に大きく外れます。
2球目、比呂の今日イチのストレートはドンピシャのタイミングでバットに当たりますが、ファールチップとなります。
「真っ向勝負なんて言葉は打者にとって都合のいい、きれいごとだぜ!」
比呂はそう心の中で叫びながら、渾身のストレートを投げますが、英雄のバットは完璧に芯をとらえ、打球は応援席の最上段に飛び込みます。
その瞬間、比呂は思わず下を向いてしまいます。
しかし、判定はファールとなります。
上空に吹いていた強風によって大きく左に流されたボールが、ポール直前でわずかに切れていたのです。
前を向くと、英雄が力強いまっすぐな目で比呂を見ています。
100%ストレートしかないと、勝手に、信じ切った目で。
その融通の利かないバカ正直さに、雨宮ひかりはホレたんだ。それを忘れるな。
比呂は内心でそう言い、スライダーを投げます。
ボールは曲がらず、ど真ん中のストレートでしたが、一瞬スライダーかもしれないと思った英雄のバットは空を切り、試合は終了となります。
そして、応援席で最後の打席を見ていたひかりは、静かに涙を流します。
【最終回 英雄とひかりの思い】
見事準決勝に勝利した千川チームは宿舎でカラオケを楽しみます。
その頃、英雄が海辺でたそがれていたところに、ひかりが来ます。
「完璧に負けた。比呂にもおれにも。」
英雄は比呂との勝負を振り返って、そうつぶやきます。
「いつも鍵を閉めているものね。」
「ヒデちゃんのその部分にわたしの居場所があるんだって。だから、なるべくドアは明けて置くようにって。」
比呂が英雄を三振にとったところを見て、ひかりがそう感じたと言い、英雄は過去の比呂の発言の真意を理解します。
そして、改めてひかりに告白をしたことで、2人は結ばれることとなります。
【最後に】
野球漫画でありながら、スポコンではないこの漫画。
試合の展開は、もちろん緊張感があり、興奮させられるシーンもたくさんありますが、比呂や英雄、そしてひかりの複雑な感情が繊細に描かれていて、それが読者の心を揺れ動かします。
3人がそれぞれお互いに、自分たちの関係性を理解していて、その上で、本心ではどうありたいのか。
最後の勝負で比呂は、大好きな野球を楽しむことができずに苦しい表情を浮かべ、勝利の瞬間も嬉しさとは別の涙を、一筋流します。
野球のライバルとしてではなく、親友でありながらも恋敵である英雄との勝負になってしまった最後の対決。
そして、この勝負の先に比呂のハッピーエンドはないと比呂自身が分かりながら、最後まで投げ切ったことに、とてつもない切なさを感じました。
比呂や英雄、ひかりが魅力的な人物だからこそ、その葛藤に対して、私たちももどかしい気持ちになります。
また、千川野球部のチームメイトも良い味を出していて、特に、比呂の幼なじみでバッテリーの野田は、最後も比呂の真意を理解しながら空気を読んだ行動をとるナイスガイでした。
そしてなにより、比呂のことを一途に思い、献身的に尽くしてきた、マネージャーの古賀が本当に良い娘で。
英雄との勝負、そして自身の初恋に決着をつけた比呂が、その好意を知りながら自身も好意を抱き始めている古賀と結ばれて、幸せになる未来を切に願います。