最終巻までのあらすじ
闇の武闘家たち「闇」による久遠の落日(くおんのらくじつ)という世界大戦誘発計画がついに作動した。
ミサイルを連合国に打ち込むことにより血で血を洗う戦の舞台を整える久遠の落日は殺人を目的とする殺人拳の使い手たちにとってはまさに理想とするところであった。
「もう一度己の真価を出したい」
というある意味では武人の本心を計画に移す「闇」の達人たち
それを阻止する活人拳の梁山泊
両者の火ぶたは切って落とされた。
先手の「闇」の妙手により梁山泊の最大戦力の風林寺隼人は戦線を離脱。
梁山泊の力をうまくそぐ形で始まったが、途中の仲間たちの協力もありなんとかミサイル発射装置付近まで歩を進めることができたケンイチ。
しかし、「闇」の弟子育成機関「YOMI」の最後の一人にして一影の弟子である鍛治摩がケンイチの前に立ちふさがる。
ミサイルの発射は止められるのか?それとも久遠の落日は成功してしまうのか?
最終回ネタバレ
ケンイチと鍛治摩には共通点があった。
それはどちらも武において才能がないことであった。
武において才能がないことはいばらの道を進むことを意味する。
互いの人生については知らなくても自分の人生を通して誰よりも分かり合える両者。
戦いは一進一退であったが、鍛治摩の必殺技「鎬断」により絶命寸前まで追い詰められたケンイチ。
そんな時に彼をもう一度立ち直らせたのは仲間とかつての敵たちの魂の声だった。
相手の体にめぐる気を断つことにより機能不全にする鎬断に対してケンイチは気の掌握を土壇場で身に着けた。
奥義を破られた鍛治摩。
気の使い方を体得したケンイチ。
一進一退の戦いは終わりを告げる。
ケンイチの流水無拍子が鍛治摩を捉え活人拳と殺人拳の弟子同士の戦いはケンイチの勝利で終わった。
しかし、ここで話は終わらなかった。
なんと一瞬の隙が生まれ、ミサイルは発射されてしまったからである。
このまま久遠の落日は成功してしまうのか…
誰もが諦めかけたその時、
ミサイルを空中にて撃墜する超人がそこにいた。
風林寺隼人が己の肉体で破壊したのである。
こうして久遠の落日をなんとか未然に防ぐことができたケンイチたち。
今回の戦いの勝因は師匠と弟子の信頼関係、そしてライバルたちとの友情が数的不利を覆したのである。
久遠の落日から時は経ち、その後のことを原稿に書くケンイチ。
どうやら、最初の夢の一つである小説家には無事になれたようだ。
写真には美羽らしき女性との結婚式のツーショットがあることから、結婚したことがうかがえる。
そして最後の写真には美羽とケンイチに似ている2人の子どもの姿が映っているところで物語は終わりを迎える。
感想
最終巻まで読んだ感想として2つあります。
1つは内容についてです。一言でまとめるならもっとじっくり読みたかったです。
当時のサンデーは改革ということもあり、腰を据えて書くには少々難しい状態でした。
例によってケンイチもどうしても急かされていたので最終回周辺は慌ただしい展開が続きました。
しかし、そういった中でもしっかり善とはなにか・悪とはなにかについては内容に落とし込んでいたと思います。
ただ、もっとそうしたものを読みたかったというモヤモヤはあったかなというのが正直な感想です。
2つ目は読んだ後の心理面についてです。
作中ではケンイチは最後まで師匠を超えることはできませんでした。
これが他の漫画にはない面白さだと思います。
他の格闘漫画では、師匠は超えるものであってその超えた先にライバルがいる構図がほとんどです。
しかし本作では、ライバルたちとの戦いの後の見果てぬ先に師匠がいるという作りです。
これは現代を生きる私たちにとって身近なものだと私は思います。
なぜなら、学校や会社でも最初にライバルと切磋琢磨するステップがあってから先生や上司といった師に近づくからです。
どの道の達人も一日では成り立っておらず、みんな日進月歩の鍛錬を重ねて今のポジションにいます。
それを一足飛びにいくのも漫画の面白いところですが、泥臭く地道に成長するケンイチに同情して応援したくなります。
そして、「あのケンイチだって頑張ってたから自分も頑張るか」
という前向きな気持ちになるわけです。
今一歩踏み出せない・努力が続かない人にはぜひ手に取っていただきたい作品でした。